こころざし

日々のつぶやきをしるしたブログです

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ウォーキングインテリジェンス。

この本の著者と、個人的に何度かお会いしたときに感じた印象である。

彼の発する言葉は、彼の人生で吸収されてきたあふれんばかりの活字からシステマティックに厳選されたものだった。

ハタチにもならない私が彼との共通の話題を見いだすのは難しいように思えたが、アニメを社会学的に取り扱っていた彼は、なんとか私の知性にまで「架橋」して話をしてくれた。

彼は、フォークとスプーンを片手で扱い、上手にサラダを取り分けた。歩く知性と言いたくなるような振る舞いと思ってしまい、自分が恥ずかしく思えたのをおぼえている。
同席の父にしても、彼の知性にうなっていた。

当時浪人生だった私は、美大に決定的に敗北していた。ほとんど時間内に描き上げることもできなかったのだ。
高校時代、本を読まないわけではないが、主な時間消費は、「ビバリーヒルズ高校白書」と、「刑事コロンボ」を視聴し尽くすことだった。



それから10年以上が経ち、あの、原発事故が起きた。
この本は、『「核」論』というタイトルで、原発事故以前の2006年に書かれたものである。
「核」論とは、各々の論、各論、と核の論争とをかけたもの。
福島の原発事故があり、この本は、突如脚光を浴びることとなった。


さて私である。
原発事故に少なからぬショックを受けていた。
私は広島の被爆三世である。
父は二世カメラマンとして平和運動もしている。
私も社会学部に一時身を置いたものとして、この大問題に何をどう考えたら良いのか、あわあわとして、突然泣き出したり、夜中にムクリと起きて祖母の遺品を撮影したり、とにかく不安定な状態。

そんな時、この本が増補版として発売されることとなった。
わたしは、ネットを通してこの本の存在を知り、ツイッターで作者と簡単な挨拶をさせていただいた。

そして。
不安定な状態のまま、アメリカに旅行に行った私は、ぶっ倒れたのだ。
正確には、「壊れた」と言うべきか。
元来、広島に原爆を落とした国になぜ媚びへつらわなければならないのか?という疑問を抱えていたということもあるだろう。
周りのアメリカ人すべてが敵に見えた。
それからは、ここで書くことはかなわないほど、不思議な出来事に何度も遭遇した。
英語のほとんどできない夫の努力によって、なんとか帰国。

いろいろあったが、それからは、半カメラマン半主婦として、二年経ったのだ。

やっと。やっと。やっと。これを読むべき時が来た。


当時は本当に混乱していたし、集中力もなかったのだろう。前書きを読むだけで一週間かかる状態だった。だが、今回読んでみたら、それほど時間はかからなかった。

学術書が多く引かれた文章は、読みやすいとは言いがたいが、所々、鉄腕アトムやゴジラのような大衆文化に話題を落とし込まれている。

難解で一般人には読解不可能に近い学術書がまとめられ、急にサクサク読み進んだ。
著者は、スイシン派でもなく、ハンタイ派でもない。そのどちらに対しても「非共感的」に感じている、と著す。

スイシン派の引くに引けない状況。
反対派の過剰なまでの拒否反応。

その折衷案を模索して震災から2年が経とうとする。
その折衷案を考えるときに、まず読まれるべき本だと思った。


エネルギー源として原発は必要不可欠であるという推進派。
彼らの隠蔽体質は目に余るものがある。
しかし、当初「原発は完全になくすべきだ」として、頭ごなしに反対していた反対派も、思考停止状態といえるのではないか?
原発は危険だ!と訴えすぎることによる弊害もある。就労職員の核に関する知識の低下。労働のモチベーションの低下。スイシン派の隠蔽体質を作り上げもした。
危険なものでも、突然姿を消してくれるわけではない。
平和的に終息するために、議論がなされるべきだ。

それなのに、国家は、なし崩し的にスイシンへと向かおうとしている。

反対の「やり方」が、問われるときだ。

まず、原発を知ること。核を知ること。民主主義を知ること。アメリカを知ること。冷戦を知ること。倫理を知ること。学問を知ること。未来を模索すること。

原発は、本当に、複雑な要素が絡み合った問題だ。

それをほどいてくれるわけではないが、その手助けになる本かもしれない。

多くの情報から、より良い選択をする。

ウオーキングインテリジェンスにはとてもかなわないが、
私もたくさん本を読もうと思った。読むことが、これからの武器になるのだ。

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